第136回 『忘れる』

しつけ指導、訓練、散歩代行、お預かり犬のお世話と毎日毎日忙しく働かせて頂いている。『忙しい』は『心を亡くす』と書くが、人として最も大切な心を亡くさないよう、常に自分なりに研鑽している。磨く方法はいくつかあるが、読書に充てる時間は努力してでも捻出している。静かな心で先人の智慧に触れる時間が私にとって最も幸せを感じる時間である。ここ数年は色々な本を読むというより、座右の書の数冊の内から繰り返し繰り返し読むスタイルに落ち着いている。いくら良い教えを学んでも、複読をしないと自分の糧にはならないのだ。何度も何度も読み、実践し、昇華していく。

先日から再読している本の中の『苦難の道に苦難を忘れ・・・』の一節にいたく感動してしまった。思わずメモを取った程、心にズドーンと響いた。その本は5回目の再読にもかかわらず、今まで見落としていたのか、私の心の琴線に触れなかったのか、いづれにしても5回目の再読にして初めてこの名文に触れ感動した次第である。

苦難の道に苦難を忘れる、とはいかなる意味だろうか。『いやだな』『つらいな』『避けたいな』という局面にも肚を据えて真正面から向き合っていく。マイナスの局面に浸かる事、一体化する事でいつしか壁を克服し、気付けばそこには成長した自分の姿がある、という事である。

退職代行業というサービスが繁盛している現代においてはこういう言葉や考えは受け入れられないのかもしれないが、一歩進めて『苦難の道』を『感謝の道』または『快楽の道』に置き換えてみてはどうだろう。

感謝の道に感謝を忘れる。

快楽の道に快楽を忘れる。

有難いと思うべき事が当たり前になり、もっと美味い物、もっといい服、もっといい車・・・。

餓鬼道、修羅道に陥ってやしないか。

いや待て。

そういうお前はどうなんだ。

片足突っ込んどりゃせんか?

油断したらどっぷり浸かっとりゃせんか?

脚下照顧。

餓鬼道、修羅道に陥るとエネルギーが落ちる。

それは犬のしつけや問題行動改善にも悪影響を及ぼすのである。

苦難の道に苦難を忘れる。

マイナスの環境に真正面から向き合う。

自分も含め、現代人が忘れてはならない至言だと思うが如何。

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