第129回 『クロちゃん』

日々色々な犬と飼い主と関わらせて頂いているが、中でも非常に熱心に私の言葉に耳を傾け、実践してくれている方がいる。その方が飼われている犬は非常に扱いにくい気質で、引っ張り癖が激しかったのだが、驚くほど上達し、穏やかに歩けるようになってきている。私のしつけの考え方に信用してくれ、結果を出してくれる事ほど幸せな事はない。

「まだまだ前途に不安が無くなったわけではありませんが、足元に光が灯るようになりました。」

訓練士冥利に尽きる言葉である。

犬が言う事を聞くようになったとしても、必ず崩れる時はくる。そりゃそうだ、生き物だもの。でもその時に『このやり方をすれば大丈夫。』というものがあれば。軌道修正出来るものがあれば、人は希望を持てる。ガンになったとしても、この治療法を実践すれば必ず治る、というのがあれば前を向けるように。一人の飼い主さんにとって、その役割を私が担えた事を心から幸せに思う。

私は私のやり方考え方に賛同してくれ、実践してくれる方に全力で支えていく所存である。

話はかわる。

先日、14年もの長きにわたってお世話させて頂いた犬が旅立った。最後の半年間はほぼ介護に近い状態。飼い主さんはご高齢の方で、腰や足がなかなか自由の効かない体に鞭打ちながらのお世話だったので、心労は相当なものだった。「老々介護ね。」と笑いながら仰っていたが、まさに仰る通り大変しんどかったと思う。犬同様、よく頑張られた。14年の付き合いを終えるので感慨深いものがあり、最後の挨拶の際、飼い主さんの潤んだ目を見た時は涙腺が崩壊しかけた。10年前にご主人が亡くなられた時にも泣かなかった方の目に涙が浮かんでいるのだ。14年という歳月の間に訓練士と飼い主という枠を越えた、人と人との関係性が成立していた事の証左になるであろう。

人は人と関わる事で成長する。幸せの何たるかを知る事が出来る。

今まで多くの飼い主さんと関わり、成長させて頂いた。その御縁を作ってくれた多くの犬達に感謝である。一日でも長く犬に感謝出来る日々を送りたいと思う今日この頃である。

合掌。

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