第96回 『肥料』

実家の老描、愛犬マックス、10年以上お世話になった恩人、15年近く面倒を見させていただいた犬。去年の暮からここ最近にかけて別れが相次いでいる。否が応でも人生を考えさせられる。元々沈思黙考人間である私がさらに磨きがかけられ、常に考え込む事が増えてきている。と書くとまるで私がふさぎ込んでいるかの如くに思われるかもしれないが、実際はそんな事はない。明るい気持ちではないかもしれないが、落ち込んでいるわけではなく、何と言うか、静かな気持ちで物事を考え日々を過ごしている、という感じである。少しの配合で深みが増すコーヒー豆のようには人間の場合は簡単にはいかないが、もう少し時間が経てばここ最近の沈思黙考の時間がうまい具合に焙煎されて人生に還元されていくような予感がしている。人生に還元されるという事は即ち仕事にも還元されるという事でもある。難しい犬のしつけに応用できるようになるのは勿論の事、導き難い飼い主を助けてあげられる力が増すと思う。誤解を恐れずあえて書くが、訓練士の仕事は犬を治す事ではなく、飼い主を治す事である。その為には説得力のある人間になる必要がある。

ここ最近の出来事、沈思黙考の時間は私にとって欠く事の出来ない肥料なのだ。

 

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