第106回 『里仁編』 

昨年から関わらせていただいているとある飼い主さんと犬の成長が著しい。喜ばしい事である。引っ張る・吠える・嚙むのお決まり3点セットでとても悩まれていたところ知人を介して私に連絡をしてきてくれた方である。かなり状態の酷い犬だったが飼い主さんは実によく頑張ってくれた。私の指導を厳守してくれる飼い主さんは必ず変わる。伸びる。過信はないが自信はある。過信がないから日々反省と研究と努力は怠らない。『朝に道を聞くを得ば、夕に死すとも可なり』と孔子のダンナも仰られている通り、何才になっても謙虚さと素直な心を失わず勉強である。

ドッグトレーニングという言葉があるが、犬の問題行動を改善するのはトレーニングではなく運動としつけである。散歩と教育である。散歩に費やす時間を作る努力をしなくてはならないし、教育者としての信念を確立しなくてはならない。私は犬に叱る事はたくさんあるが褒める事は皆無と言っていい。なのにどんな犬も私が飼い主さん宅に到着すると尻尾を振って迎えてくれる。そして穏やかな表情になる。それは信念に裏打ちされた教育の力である。『楽しくしつけましょう!!』『褒めて教えましょう!!』『一瞬で愛犬が賢くなる!!』・・・そのような言葉には嫌悪感を催す。虫酸がはしる。そのような言葉を発信する方たちは教育とは何たるかを考え直した方が良い。教育の根本は『地震・雷・火事・親父』である。この名言は実に深いのである。真理をついた言葉だから残るのだ。

などと書いているとまるで私が眉間に皺を寄せながら犬に教育しているかのように思われるかもしれないが、んな事はない。冷静に穏やかに、楽しんで犬と向き合っている。

教育とは静かで、厳しく、楽しいものなのだ。

それは私の言う事を厳守してくれる飼い主さんが実践で示してくれる。その証明をこれからも一つ一つ丁寧に積み上げていく所存である。

『山笑う』の季節である。テレビやスマホやパソコンで疲れた目を緑で癒しながら、教育について思いをめぐらしましょう。

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