第50回 『手のかかる犬ほど・・・』

15年振りに一目惚れしました。

目はキリッとして鋭く、鼻は筋が通って高く、毛はオオカミのように美しく、耳は真っすぐ立ち、尾は巻尾で、年齢は2才・・・あ、はい犬です。

先月から関わらせていただいている犬で、初めて飼い主さん宅に到着した時に窓辺からジッと私を見据える姿にやられました。思わず「うわぁぁぁ」っと声がもれ、トキメキ100%になりました。(なんのこっちゃ)

私は動物らしい犬が大好きで、誰にでもすぐなつく愛玩犬よりも気難しく一筋縄ではいかない犬に魅力を感じてしまいます。

その犬の問題は極度の怖がりで、散歩に連れて行けない事。走っている車やバイクを見たり、遠くで鳴っているエンジン音を聞いただけでパニックを起こしてあばれます。飼い主さんはお手上げで、その犬は約2年間散歩に連れて行ってもらえず家と庭だけの引きこもり状態でした。原因は仔犬の頃からの経験不足と飼い主さんの間違った接し方。

パニックの度合いがかなりひどいので改善していくのはかなりエネルギーを要するとは思いましたが、鼻の使い方を見た時に『大丈夫、治る。』と何となく感じました。この『何となく』がバカに出来ないんですよ。

パニックを起こす度にマッサージをしたり、信頼関係を築く為にブラッシングに時間をかけたり、車がほとんど走らない時間を選んで朝3時半から散歩したりと、色々な努力を重ねた甲斐あって1クール終了しない内に喜んで散歩するようになりました。尻尾がピンと立ち喜々としたエネルギーで匂いを嗅ぎまわる姿を見ると幸せな気持ちでいっぱいになります。走っているトラックを見たり、交通量の多い道を歩いたり、杖をついて歩いている人を見るとまだパニックを起こしますが、まぁ仕方ない。2年も引きこもりだったんですから。毅然とした態度で待つのみ。

競技会で好成績を目指すのも良いですが、精神を病んだ、扱いが難しい犬を幸せにしていく努力は格別です。

そういう努力が私は楽しくて楽しくて仕方ないんです。

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